あなたの夢で眠りたい

夢見た未来はまだ来ないけどその日を迎えたい、きみと一緒に。

失くしたくない記憶の保管

記憶は風化する。誰かが事実として残さない限り、それらはやがて消滅する。
だからわたしはここに記録する。あの時間、あの景色の断片を、未来に残すために。




2023年3月15日 福岡サンパレス
会場内の照明が落ちると、突沸した湯のような歓声が上がった。Aぇ! group初の全国ツアー『Aッ!!!!!! と驚き全国ツアー』の幕が上がった瞬間だ。

モニターに映像が映し出される。
ワゴン車に乗ったメンバー6人と日本地図、今回巡る地方の名所がポップなイラストで描かれており、6人の名前と顔が順に紹介される。
このOP映像は2パターンあり、オープニング時のメンバーが出てくる場所によって変わってくる。客席の1階扉から登場する場合があり、そのときには客席裏で控えているメンバーがリアルタイムで映されながら紹介される。

映像と音が終わった。
すぐにはじまったのは『Aッ!!!!!!』のイントロだ。と同時にステージの照明が付き、後方上段に設置された階段上にメンバー6人のシルエットが見える。スポットが集中し、新しいメンバーカラーの衣装に身を包んだAぇが登場した。
イントロ中に正門が会場を煽る。「俺たちと最高の思い出つくっていきましょう!」
ピースサインを掲げ、まばゆいばかりの笑顔で歌う6人。6色の客席も同じように揺れる。溢れる歓声。巻き起こる熱気。
頭サビが終わると同時にメンバーが階段を降り、ステージ前方まで出てくる。前回がアリーナ会場だったこともあり、ホールクラスはやはりステージの距離が近いことを実感させられる。近い。圧倒的に近い。
最初の立ち位置は下手から 小島 福本 正門 末澤 草間 佐野 とお馴染みの並び。末澤ばかり見ていたので感想が一極集中していくが、すえざわくん、しっろ ほっそ ちっさ。顔がいい。まぶしい。きらきらのお顔に両耳のピアスがよく映える。

このツアーOPが初着用の新規メンカラ衣装は、オフホワイトの地にそれぞれのカラーのダマスク柄が入ったジャケットタイプのものだ。友人曰くジャニーズ版USAGI ONLINE。気に入ってる表現なので転用した。
ド派手な装飾こそないものの、ジャケットのラペル(カラー)部分がギラッギラになっていたり、ベロア生地になっていたり、どデカいビジューパーツがこれでもかと付いていたりする。もちろん今回もジャケットの形や中のシャツのデザイン、ビジューの種類や配置などが個々に違っており、細部までデザイナー末澤誠也のこだわりが詰まっている衣装だ。

『Aッ!!!!!!!』の間奏では佐野が声出しの煽りを担当。
全編を通して言えることだが、ステージを縦横無尽に駆け回り、思う存分客席を煽っている姿を見れること、それに応えられる環境があってこそのライブだと改めて実感できた。


2曲目はメンバー紹介曲の『僕らAぇ! groupって言いますねん』。
声出し解禁に向けてC&Rをふんだんに盛り込んで作ったと佐野が言っていたが、前回のおてんとコンでは声出し解禁とまではならなかったために今ツアーが解禁だった。
念願のコールや歓声を受け、初日はまさまさが涙ぐんでいた。

曲中の小島のパートでは(既存のものも含め)毎回違う名言が登場するが、本当に何も出てこなかった回では「シューって音、興奮するよな」などと迷言が飛び出す場合もあった。
草間パートの好きな食べものはご当地グルメが上がることもしばしば。歌詞が2パターンあったが、どう使い分けられていたかは不明。
正門パートの「リア恋No.1 ギターの速弾きNo.1」で5人が鳥(?)になって舞う部分は、4月公演あたりからガヤが大きくなりはじめる。MCでうるさいと苦言を呈するもエスカレートし続けたため、オーラス直前の大阪最終公演では「みんなの心の実家ァ!」とキレ気味に歌っていた。
こうした悪ノリが出来上がるのもツアーの醍醐味であり、それで言うと佐野パートのセリフあとの「クッサ〜!」で全員吐くようなノリになったのもこのツアーで醸成されたため。
福本パートのギャグももちろん毎公演テーマが違うが、愛すべき低めの打率。かと思えば一部のメンバーのドツボにハマることもあり、その場合は笑いが伝播して後が歌えなくなることもあった。


3曲目は『Firebird』。Aぇオリ曲の一発目であり、結成当初から歌い続けているにも関わらず、この曲のイントロが流れた瞬間毎回変わらずにデカい歓声が上がるのがすごい。 もはやDNAに組み込まれているのかもしれない。
ちなみに首アイソレがモニターで抜かれるメンバーは日替わり。佐野の日はこっそり客席から笑いが漏れていた。
最近の気づきは、単独の現場での「熱くしてやるよ」は色気が炸裂するということ。合同の現場だと少しかわいさを交えているのがずるい。
なお末澤名物「かわいい子ばっかやな」はオーラスでのみ発動した。


ここで短めの挨拶MC。
正門→末澤→草間→福本→佐野→小島
年上組は一言のみで衣装替えへ。年下組はそれぞれC&Rを交えてユーモア溢れる挨拶を。
声出し解禁後初のライブのため、観客が声を出しやすいようなセトリ構成・煽りを意識して作ったということもあり、序盤から一体感のある盛り上がりになった。


続くユニットコーナー。
年上3人が同時に消えたことにより、もしや!? と予感していたものが的中する。

まずは正門・末澤・草間による『King & Queen & Joker』。狼煙あけおめでお目見えしたナイト版白衣装(世間の通称がわからない)を纏っての登場だ。
この曲の天才ポイントはまず歌割りがKing末澤、Queen正門というところである。パブリックイメージで言えばすえのりのこのパートは逆になるはずだが、Kingを末澤が、Queenを正門が歌ったことは大変な解釈の一致であった。欲を言えばQueen草間、Joker正門であればさらに趣深かったが。

そしてまざまざと実感するのがAぇのオリ曲はキーが低いということ。SexyZoneの初期曲は総じてキーが高いため、マカロン(特に正門)は歌いづらそうだった。
しかしその意外性が返ってとても良く、普段きらきらきゅるんをあまりしない年上3人で王道アイドルソングを歌うのは、かなり健康増進に寄与する結果となった。

曲終わりには末澤正門草間の立ち位置で3人がぎゅっと集まるのだが、正門がリチャ末の頭を抱きよせたり、末澤が正門をじっと見つめたり、すえのりが見つめあったりしていた。
このツアーでたまにある、すえのりチャンスその1がここだ。すえのりとは一体なんなのか。


年上組がセンターから捌けると同時に暗転、『君の彼氏になりたい。』のイントロがはじまる。ステージ上段に現れたのはそう、小島・福本・佐野の年下組である。
ついこの前まで大学生だった3人が、成熟しはじめた色気を武器にダンサブルなリア恋爆発ソングを歌うというこの狙い撃ち感。確実に仕留めてやろうという気概を感じる。
めろセリフ最初の「大好き」は佐野、「帰さない」はビバちぇのローテーション。前半公演では「うち来いよ」や「帰んなよ」などのアレンジがあり、毎公演年下組のオタクたちが倒れる姿を目撃できた。楽しい。

衣装は初単独前まで舞台いいますねんや焼き鳥歌唱の際などに着用していたエイトのBoNお下がり衣装だ。
年上がきらきら王道の白で年下がイケイケ色気の黒。このギャップとコントラストが非常にニクいユニットコーナーだった。


ここから怒涛のダンスパート1がはじまる。リハーサル期間から「めっちゃ踊るからしんどい!」と言っていたその全貌が徐々に姿を現す。

はじめに流れてきたのは『Party-Aholic』。センターのモニターの左右には幕が張られ、妖しげなサーカス小屋のようなセットがステージにせり出している。
頭サビを歌うとメンバーはセットの中へ。カメラがその後ろ姿を追う。薄暗い密室で歌う6人。
Bメロの終わり、ソファに腰かけた正門とその隣に座る末澤。正門の口元に添えられた人さし指が、「shhh...」のささやきと共に末澤の唇に移動するのが映される。
そのとき、ステージの一部を覆っていた暗幕が落ちた。瞬間、赤いシャンデリア衣装に着替えたメンバーたちがステージに現れる。本能のままに今Shall we dance……

わたしはこの演出がとても好きだった。衣装替えのためにつなぎで映像を使うことは多々あるが、それを曲中に組み込むのはサプライズ性があるしライブの流れも止まらなくて良い。ジャニーズらしい演出だなと思う。
ただ、セットと座席の位置関係により、どの会場であってもセンブロ以外の前列に入るとモニターの映像が見えない(暗幕が視界を遮る)のだけが玉に瑕だった。

ちなみに君彼からのパリアホで心配したのは福本担の情緒だったが、ものの見事に全員ここでやられていた。同情を禁じを得ないほどパリアホの福本大晴は大変にえっちなのである。あー舌出しは困りますたいせーさん。
もちろん他の5人も非常に妖艶で、間奏中に腹チラチャンスがあるのも良かった。日によって抜かれるメンバーが違うので、 こちらも公演数が多いからこそ楽しめる要素のひとつである。


続いては『My MP3』。なんと赤西仁の楽曲である。
これには本当に感謝した。クラブの雰囲気を醸すために選んだと福本が話していたが、この曲を引き出しの中に備えていたのがすごい。どこから引っ張ってきたのか。
EDMサウンドが心地よいMP3はこれまでのAぇのカバー曲の中ではかなり異色だったが、全員成人した今のAぇ! groupと楽曲の雰囲気がぴたりと一致した。激しく踊るわけではない、余裕と色気が必要なダンス。そして落ちサビで覗かせる激情。その起伏がとても良かった。


会場のボルテージを高めるのに選ばれたのは『WHIP THAT』。この曲で客降りがあったため、いまだにイントロを聴くだけで高揚する。
zeppのお見送りを除けば、客降りは初単独以来ということになる。縦ノリで会場を沸かすメンバーの姿を、ステージよりもさらに近い距離で見れたあのときの興奮と緊張は忘れられない。
毎回、客席の奥の方で埋もれる末澤を探すのに必死だったし、小島や草間は思った以上に"骨"という感じがして心配にさえなった。そういう、リアルを体感できるのが客降りの良さだと思う。


赤シャンデリアのジャケットを脱いだ小島が、白いシャツを羽織ってひとり、キーボードに向かう。繊細な指が鍵盤を滑る。興奮の熱が引かない会場を静寂に導く、切なげなピアノの音。

スローテンポによく似合う、甘い声で歌うのは『君が思い出す僕は 君を愛しているだろうか』。
このツアーの裏テーマは「挑戦」。個人個人の新しいアプローチを随所に盛り込んでいる。小島の挑戦はこの君君でのピアノソロ伴奏だった。
小島の伴奏に合わせ、白シャツ姿のメンバーがぽつぽつとステージに現れる。6人それぞれの歌声が、やがて六重奏となってしっとりと切ないバラードを紡いだ。


ほっと息をついたのも束の間、急にサイレンが鳴り響く。モニターに現れたのは俺たちの永遠のマドンナ・ヨシ子。ここからは関西ジャニーズ伝統のゲームコーナーである。

今回は直近で行っていたガチネバのタイトルに掛け、『ガチでネバーエンディングなゲームコーナー』を開催。
各自の名前が書かれたロッカー型BOXに用意されたコスプレ衣装に着替え、ヨシ子の提示したゲームを行う。クリアできるまでライブ本編に戻れないという設定だ。

コスプレとゲームの内容はすべて日替わり。
コスチュームの種類は医者、ポリス、部活が主なローテーションであり、イレギュラーとしてガチネバ衣装とおてんとコンのソロ衣装の場合もあった。
基本的に各コスプレテーマに対し1人〜2人は女装(医者:ナース、ポリス:女性警察官、部活:チア)だったが、全員が女装の回もあり、その場合はかなりカオスな絵面になる。また、コスチュームは各公演ごとにメンバーの誰かが決めており、他のメンバーはその日着替えるまでどの衣装が用意されているか知らなかったという。

ゲームは主に、お題に対して全員の答えを揃える「以心伝心ゲーム」や、お題に自身が当てはまると思ったらロッカーから出てくる「BOXゲーム」、6人連続で滑ったら成功の「ギャグすべり」がある。
しかしコスプレの出オチ感が回を増すごとにエスカレートしていったため、終盤はもはやゲームがおまけになるという逆転現象が起きていた。


ゲームにクリアすると(しなくてもヨシ子が特別に許してくれるが)ガチネバ劇中歌の『ストーリぃ!』をコスプレ衣装のままで披露。
ガチネバでは末澤演じるゆうやへの応援歌だったため歌割りに末澤のソロパートがなく、ルンダ(草間)が担っていた落ちサビを末澤パートに変更していた。


そしてそのままの衣装でMCに突入。
気に入っているor好評のコスプレメンバー3人が残り、あとの3人が先に着替えにいくのだが、だいたいここで毎回すったもんだが起こるのが定番。

次の衣装は青ナポ。このあとのコーナーは日替わり曲の『日本列島ダーツの曲』のため、どの曲の雰囲気にも合う衣装と言うだけあって今回もここで着用した。
ダーツ曲は6人がそれぞれ1曲ずつセレクト。47都道府県の日本地図がメンカラで割り振られており、ダーツが当たった都道府県の色のメンバーが選んだ曲を披露する方式だ。
各色7ヶ所ずつ、緑だけ北海道があるため6ヶ所で均等に割り振られていたが、当たる回数はなぜか青がめちゃくちゃに少なくオレンジが圧倒的に多いという結果になった。
ダーツの選曲は以下の通り。

末澤   Naughty Girl / King & Prince

草間 夏のハイドレンジア / SexyZone

正門     恋をするんだ  / Hey! Say! JUMP

福本     I promise / King & Prince

小島      YOU / KAT-TUN

佐野      Street Blues / 関ジャニ∞

末澤のNaughty Girlは過去にAぇでやりたいと言っており納得の選曲。振り入れがかなり難しかったらしく、初回披露時には立ち位置についた際全員小声で確認し合う姿が見られた。
完全ガチャ要素のため、毎回リハーサルの際には必ず6曲ともリハしていたらしい。


後半戦は愛メドレーからスタート。
小島の「このコーナーでは僕たちAぇ! groupが日ごろ感謝しているファンのみんなに向けて愛を、愛を、愛を、愛を、愛を!歌にしてあなたに届けるコーナーでございます!」という紹介に乗せ、まずは『LOVE YOU ONLY』。サビでは突如現れる自転車に小島もしくは福本が跨り爆走、モニターに出ている愛ゲージがいっぱいになると後ろの風船が割れるというハチャメチャ演出があった。

小島「風船が割れるぐらい俺たち、みんなへの愛が溢れてるんです。でもこんなんじゃまだまだ伝えきれない!みんなが、好きすぎて」
次の『スキすぎて』ではスタンドマイクを立て、6人向かい合って歌う。末澤からはじまる間奏の「愛・愛 Love you」あとのセリフは日替わりだった。地方公演だと方言を交えたキュン台詞が多かったが、ネタがない場合PPAPが飛び出すなどわりと自由度高め。投げちゅーやぶりっこポーズの日もあった。
曲の終盤は佐野の暴走が定番化。末澤がターゲットになることが多く、姫抱きにされたりマイクを奪われたりしていた。

佐野「ここにいるみなさんのことがちゅきちゅきです」
オタクの需要を完全に"理解"っているAぇ! groupはここで『ちゅきちゅきハリケーン』を披露。頭サビ終わりの草間による「りゅちぇじゃなくて、リチャだよっ☆」はリチャ魔女を彷彿とさせるギャルみがあり最高にかわいかった。毎回リチャード無双曲である。

ちゅきハリ曲終わりの「付き合ってください」は福本。そのまま「いや、結婚してください」とプロポーズして『One Love』へ。
Aメロをすえのりが交互に歌うため、なぜか正門からモーションをかけて末澤がガチ照れする回や2人が見つめあって歌う回などもあり、強めのすえのりチャンスがあったのがこの曲。すえのりとは一体なんなのか。

LOVEメドレー最後の曲フリメンバーはすえのりランダム。
末澤「俺、やっぱりお前と付き合いたいかも。……知らんけど」
正門「みんなのことが本当に大好きです。君を幸せにする。……知らんけど」
等が観測された。
というわけで『しらんけど』。サビ頭の「大阪は今日も雨」は途中から地方名に変えるアレンジがあった。
間奏のコント部分「知らんのかい」のツッコミは末澤が一手に担い、ステージの上手から下手までを駆けまわって毎回全力で「知らんのかい!」を叫んでいた。


後半のダンスパートはインスト始まり。
末澤、福本、正門の3人はレーザーなどのライトを用いた幻想的なダンス。草間、小島、佐野の3人はモニターの映像と連動させたダイナミックなダンスで魅せた。

またここでも新規衣装を着用。アメカジとストリート感が印象的なワイルドなダークトーンの衣装は、わっしょいで見たときに遠目からでもミラーボールのようにギラッギラに輝いて非常に目立っていた。デザイナー末澤誠也、やはり天才の男である。


『Grandeur』は本家と違う振り付けであるものの、揃ったダンスが映える曲ということで6人全員がきっちり合わせてきた。
Aぇのダンスは個人の癖の強さをそのまま残すことがほとんどだが、この曲では敢えて揃えることを選んだという。その分振り入れも大変だったようだが、Aぇの新たなダンスパフォーマンスとしてのポテンシャルを見せた。

続く『RAM-PAM-PAM』でもゴリゴリに踊り、唯一の関ジュ曲である『ロマンティック』に繋げた。
ここでも客降りとC&Rがあり、ラストスパートへとさらにボルテージを高めていく。


客降りの間にステージにはバンドセットが。
福本が客席とメンバーに声出しを煽り、バンドコーナーへ。
サックスの華やかな音が響く。『Breakthrough』が始まった。末澤のシャウト、小島の煽り。
土台と芯がブレないバンドサウンドとメンバーの歌声、客席の歓声、会場全体の熱気。それらすべてが混ざり合って、Aぇのライブ特有の一体感が強固なものになっていく。


「この曲は一緒に歌ってください!」という草間の煽りで入った『ブラザービート』では、正門の「お前やろ? お前やろ? 今日の俺はほんまに怖い」や小島の「この間ショートケーキ俺のやつおまえ食べてたやろ」佐野の「見てたで」という関西弁アレンジが混ざってコミカルでかわいらしい。そしてギターを弾く末澤の表情が一番かわいいのもこの曲だ。

Aぇの強みは、本来バンド曲でないものもバンドスタイルで披露できること。その幅広さは他のグループには真似できない。

その真骨頂が『BANGER NIGHT』である。初見のとき、まさかこの曲をバンドでやるとはと度肝を抜かれた。
パワフルな重低音のリズムに、ギターを置いた末澤がマイク一本で立ち向かう。
狼煙単独からOZを経て、さらに歌声の厚みが増した末澤がボーカルで魅せる。かと思いきや、間奏に差しかかると、ステージ上段に登った末澤の足が力強く地面を蹴った。激しく舞い踊る。そう、JAMPですら振り入れに苦労していた難易度の高いこの曲で、末澤はソロダンスを披露したのだ。
鋭敏で美しい、激情を織り交ぜたダンス。しかも本家よりも倍の拍で音を取っている。テンポが速い。
末澤のダンスに続いて、サックスソロ、ベースソロと次々に各楽器がメロディを奏でる。
バンドをバックにダンス、もちろんボーカルも取る。このパフォーマンス方法は、歌もダンスもジュニアトップレベルの末澤がいるからこそ成立するものだ。


『勝手に仕上がれ』がはじまると、上手のお立ち台に末澤が足をかけた。華奢な手にはブルースハープ。軽やかに、歌うように、銀色の音が鳴る。
夢みたいだ。あのころライブで狂酔していた、関ジャニ∞のバンドサウンドに近づいている。
弾けるような輝かしい音を吹く目の前の男にわたしは打ち震え、その場で泣き崩れた。

末澤の「挑戦」はこのブルースハープだった。あとから聞けば、披露することが決まったのは初日の2週間前。約半月でパフォーマンスできるまでになるとは、さすが気合いと努力の男である。
「感覚で吹けるのが自分に合っている」という言葉通り、相性と天稟も共に結果を導いたのだろう。


そして、佐野による気合いの雄叫びと共に『PRIDE』のイントロが流れる。
正気か。ここでこれを歌うのか。末澤の額には汗が流れ、すでに息が上がっている。それでも彼は魂の限り叫ぶ。「まだまだいけるよなあ!?かかってこい!」
怒涛の熱気がぶつかり合い、大きな波を起こしている。感情を引っかき回す圧倒的な歌唱力。命を削ってステージに立つとはこういうことなのだ。このひとはこれが終わったらぶっ倒れるのではないかと思わずにいられない。


曲が終わると暗転、6人それぞれの挨拶に入る。
この間末澤は、いつもずっと肩で荒い息をしていた。他担から羨ましがられることも多かった、末澤無双タイムと呼ばれるバンガナ〜仕上がれ〜PRIDEは「毎回肺が壊れそうだった」と話すほど激しいパフォーマンスだ。それでも全身全霊をかけて最前線に立ち、オーディエンスを引っ張る姿はもはや神々しさすらある。
そんな彼を誇りに思うし、ずっとついていきたい、背中を押したいと思っている。

Aぇ! groupが紡ぐ言葉はいつもまっすぐであたたかい。
それがそのまま楽曲になっているのが最後の『ボクブルース』だ。メッセージ性が強すぎてセトリに組み込むのが難しいと言われていたこの曲が、6人初めての全国ツアーの最後を締め括るのに選ばれた。
これはひとつの意思表示のように思う。ボクブルース発表当時から何段も高い場所にいる今のAぇ! groupが、これからも戦い抜いていくための決意表明。

「世界が僕を裏切ったとしても 君は信じてくれるんだろう ここにいるAぇ! group(僕たち)の声を」
そう歌った6人は紛れもなく確かにそこに存在したし、それはこれからも変わらない。なにも嘘はなく、このツアーで見たものはすべてが真実だ。



このツアーは、前回のライブ『西からAぇ風吹いてます!〜おてんとさまも見てくれてますねんLIVE 2022〜』の裏テーマでもあった、"唯一無二"感をより強固にしたものだったように感じる。
セットリストの随所にかねてからやりたいと言っていた曲や演出が盛り込まれ、他のグループには真似できない構成になっていたと思う。既存のオリ曲も精度がますます上がっており、パフォーマンスの振り幅も広がっていた。
正直、今後はカバーなしオリジナル曲だけのライブをやるつもりで今回のセトリを組んだのではないかと感じたほど、ジュニアとしてのAぇ! groupの集大成を思わせるライブだった。新たな可能性を見せられた分、今後が楽しみになったことも間違いない。

この全ツは、Aぇの現場の中で1番好きなものだった。
初単独もサマスペも大好きだったけれど、それらを軽々と飛び越えるほど本当に最高なライブだった。
それが6人最後のツアーになってしまったのが本当に悔しい。今後これ以上は明確な形として世に残ることがないのかもしれないと思ったら、悲しくて悔しくてこの文章を残した。
初日からもうすぐ1年が経つ。記憶は風化していくばかりなので、もしかしたらどこか違っている部分もあるかもしれない。そんなときはそっと教えてくれたらうれしい。


2024年、6年目からのAぇ! groupは5人で歩んでいく。
それはもう紛れのない事実で、いくら嘆いても変わらない。
けれどわたしはAぇがAぇである限り、彼らの歩みを見守っていきたい。もう後がないのも、Aぇしかないのも、同じだから。

どうか、明るい未来が今後の彼らの行く道を照らしてくれますように。

Aぇ! group 結成5周年 おめでとう