あなたの夢で眠りたい

夢見た未来はまだ来ないけどその日を迎えたい、きみと一緒に。

「ブス」という笑いと女装コンテンツのあり方について


Aぇ! groupの初めての全国ツアー、めちゃくちゃ楽しい〜〜〜!!!

セトリ最高、構成最高、演出最高、Aぇ最高!
まあ例の虚無タイム*1についてはいろいろあるけど、それ抜きにしてもまじで楽しいし今までのAぇのライブで一番好きです。今まで初単独がいっちゃん好き〜〜!とか言ってきたけど超えちゃった!!!
たくさん楽しませてくれてありがとう。

だからこれを書くか本気でずっと迷っていました。
迷ってたんだけど、書かないままでいるのはなんか違うし自分の中でうまく消化もできないので筆を取りました。
主題はひとつです。


女装したメンバーを「ブス」って笑うの、そろそろやめん?



ひとまず経緯についてお話しします。

ネタバレしたくない人には申し訳ないけれど、今回ゲームコーナーでメンバー全員がコスプレをします。
コスプレのお題は複数あって、今現在で言うと警察官、医者、部活動のいずれかがほとんどです。あと一度だけガチネバの衣装も着たことがある。

で、そのお題の中で必ず1〜2人は女性ものの衣装をあてがわれるわけです。
警察官なら女性警察官とミニスカポリス、医者なら婦長さんとナース、部活動ならチアガールといった具合に。
衣装はランダムのため、どのメンバーがどの公演で女装をするかはわからない。衣装は固定じゃないってことですね。
それでメンバーによって似合う / 似合わないが出てきて、似合わないメンバーはオチと笑いの対象になるわけです。

ここまできたらもうなんとなく想像つくと思いますが、女装メンバーはほぼ確でオチ担当になります。
そうすると、結構な頻度で女装しているメンバーに対して「ブスやな!」とか「キッッッツ!」というような言葉が発せられるんですね。Aぇ担ならおわかりでしょう、名言塾のあの感じです。「ちょうどいいブス」みたいなあれ。

もちろんこれはいわゆる「その場のノリ」「ジョーク」「笑い」「ネタ」であって「本気で罵倒する言葉」ではない。
でも、果たしてこれは本当に「おもしろい」ものなのだろうか。
わたしはそうは思えなかったのでこれを書いています。

なぜ女装で笑いを取ることがおもしろくないのか、3つの視点に分けて考えてみました。


視点1:女装メンバーの該当担


シンプルに自担がブスって言われてるのイヤじゃない!?

だって自分の担当は世界で一番かっこいいしかわいいし愛しいし尊いし大切な存在だから。少なくともわたしとその周りはそうです。
自分の好きなひとや好きなものを、けなされるとまではいかなくとも、悪く言われて平気な人はあんまりいないはず。

もちろん、「いやわたし別に顔好きじゃないし、好きな顔なら他にいるし、確かに女装似合ってなくて不細工やしおもろい」って人もいるかもしれない。それはそれでその人の推しスタンスだから良いと思う。
でもそうじゃなくて、自担のルックスがめっちゃ好き! って思ってるオタクにとってはわりとしんどくないですか? わたしはしんどかったです。だって女装してる自担めっちゃかわいいし。


大袈裟かもしれないけれど、自分の「好き」を否定されると、自分自身をも否定されているような気になってしまう。
好みはそれぞれあっても、それを誰かに否定される筋合いなんてないんだよなあ〜。

だからブスとか言うのやめようよ。メンバー本人は平気かもしれないけどそのファンは傷ついてるかもよ。


視点2:トランスジェンダー


あなたの周りやAぇの現場に、トランスがいる可能性を考えたことはありますか?


トランスジェンダーとは、出生時に割り当てられた性と自認している性が一致していない人のことです。
たとえば、生まれたときは男性とされていても、自分のことはずっと女性として認識しているひとや、女性として育てられても男性として生きることを選ぶひとたちがいます。

Aぇの現場にいる人たちがみんな、生まれたときと同じ性別に見える格好をしているわけではないのです。


女装とは男性が女性の格好をすることなので、トランス女性が女性の装いをすることは当然女装ではないのですが、男性に「見える」人が女性に「見える」格好をするという構造自体は似ています。

その構造を「ブス」「似合わない」と笑うこともまた、自身を否定されていると感じる人がいるかもしれません。

それはもはや、保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)を笑いにしていた時代と変わらないとすら考えます。


正直、我々LGBTQ+の人間は自分たちがマイノリティに属していることを多かれ少なかれ自覚していて、成人してある程度社会経験を積むと、マジョリティのちょっとした無自覚な発言や行動は受け流せるようになることが多い*2と思います。いちいち律儀に傷ついてたらキリがない。

なので、もしかしたらあの場にいたかもしれないトランス女性もトランス男性も、まあそういう笑いのパッケージだしなあ、くらいで受け流しているかもしれません。
でも、それじゃあ多様性ってなんやねん! となるので、そういう可能性も視野に入れつつ、似合わない女装をブスだと笑うのはやめてほしい。


あと本旨からは外れますが、中には男性として女性の格好をしている方もいらっしゃるでしょう。女装が趣味の方もいますし、それを生業にしてる方もいらっしゃる。
そういう方々のことも否定しかねないのでは? と思います。混同することはあまりないのかもしれませんが。


視点3:ブスの呪いにかかった人


視点1とは逆になりますが、そもそも自担が「ブス」って言ってるところ見たくねえ〜〜〜〜!!!


あのね、ブスって呪いの言葉なんですよ、知ってます?

これは完全にわたし自身の話ですが、わたしは自分のルックスに全く自信がありません。どころか、好きなところなど一つもないです。顔面も身体も、すべてにおいてコンプレックスの塊です。
自己評価するなら下の中程度でしょうか。まあでもほんと見れたもんじゃないと思っています。お金があるならいじりたいところたくさんあるよ! 贅沢言わないから5億円ほしい。

鏡の中の自分を直視していると、不細工すぎて涙が出てきます。現場が近づいてくると自分がどんどん醜く見えてきてとてつもなく病みます。
人前に出れる精神状態じゃなくなるときもあります。それでも街中に出なきゃいけないときは、周りの人がみんなわたしを見て嗤っているように思えます。なにあのブス、きっしょ。え、やばいブス。

それでも、こんなブスでもマスクを取って一緒に食事をしてくれたり、遊んでくれたりする友だちがいるので救われます。ありがたい存在です。
あと、前述したようなヤバい精神状態はさすがに異常だという認識があるので(だいたい世の中の人たちそんなに他人の見た目気にしてねえ)、なるべくそういう自分の内面からは目を逸らして生きるようにしています。


でも、そもそもわたしがこんな自己評価を下すようになったのは、幼少期〜思春期に投げつけられた「ブス」「キモい」という言葉のせいです。
特に幼少期は体が小さく、当時から陰キャ丸出しだったので、男の子たちから頻繁に顔面の造形を中心に容姿をバカにされてきました。そしたらこの人格になりました。わたしってブスなのか。この顔見せたら人を不快にさせるんだな。なんで生きてんだ? うーん。

あの当時、おそらくは軽い気持ちで言い放たれた「ブス」という言葉は、わたしの心の中に落っこちて深いところに根を張り、やがて大きな木になりました。その木から落ちる言の葉はすべてわたしの容姿を否定するものです。そんな呪いにかかっています。

だから、わたしに呪いをかけたブスという言葉を、自分の好きなひとたちには使ってほしくないのです。



以上の視点から、女装したメンバーで笑いを取るのはやめてほしいなと思っている次第です。

あと、言われているメンバー本人たちがどう感じているかわからないので言及しませんが、もしかしたらひっそりと傷ついているかもしれないし。もしくは傷ついていることにすら気づいていないかもしれない。


もちろん、女装コンテンツそのものを否定するつもりはありません。先にも書きましたが、女装している末澤くんはめちゃくちゃかわいくてかわいかったです。語彙力。
ただ、その格好をブスだ似合わないだなどと言って笑うのをやめてほしい。

だって、Aぇは似合わない女装なんてしなくても笑いが取れるグループです。名言塾の「デビラブ」や「Aぇ! 剣乱舞」が良い例。しかも彼らのポテンシャルはいまやその程度ではありません。

それに近年、女性芸人の容姿いじりはほとんどなくなってきました。人の容姿で取る笑いはもう古いのです。


自分が持ちあわせていない価値観を理解するのはとても難しいことです。時間がかかるし、負担も大きいはず。

だけど、今はもう佐野くんの目を太いといじったりしなくなりました。リチャくんのルーツいじりも当初に比べれば格段に減ってきています。
自己紹介ソング*3が初出しされたときはひやっとしましたが、今回のツアーから変更されていますしね(ネ、ネタバレ〜!)。

そうやって少しずついろんな価値観を知って、多くの人たちから支持されるグループになったらいいなと思うし、そのために誰かひとりでも、このことについて考えるきっかけになったらうれしいです。


P.S. いやならオタクやめろの言葉だけは受け付けてません!!!!!!

*1:客降りから始まる回、なくなってほしい派

*2:全然そんなことない人もいるし傷つくときは普通に傷つきます。心無いことを言うのはやめましょう!

*3:『僕らAぇ! groupっていいますねん』のリチャードくんパートで、ルーツについて触れる歌詞があった